とかげのしっぽ

医学を中心とした記事を不定期に更新します

腸閉塞とイレウスについて、その治療で大切なこと

腸閉塞とイレウスは異なる概念

腸管が閉塞して、ウンチの通過障害が起きている状態のことを「イレウス」とか「腸閉塞」と言います。

 

大きく分けると

①腸管内腔が物理的に閉塞しているせいでウンチが通れない

②腸管が正常に蠕動しないせいでウンチを押し出せない

の二つです。

 

①が機械的イレウス、②機能的イレウスと表現されますが、

欧米では

①がmechanical intestinal obstruction、②がfunctional intestinal ileus

と呼ばれ、①腸閉塞、②イレウスと和訳されます。

日本では厳密に区別する必要はありませんが、

専門的には「イレウス」というと②機能的イレウスを意味することが多いので気を付けましょう。

 

 

機械的イレウスについて

機械的イレウスには

・単純性イレウス(閉塞性イレウス

・複雑性イレウス(絞扼性イレウス

の二種類がありますが、名前に騙されないでください。

 

単純性イレウス(物理的に閉塞していてウンチが通れない)

に加えて、

腸への血流が障害されたら複雑性イレウスです。

つまり、単純性イレウスの悪化したものが複雑性イレウスです。

 どこが複雑なんでしょうかね。

 

鑑別

共通点

・腹部手術の既往(→癒着イレウス)が好発

・圧痛、腹部膨満感

・振水音(+)

・立位腹部単純X線でniveau

相違点(単純性:複雑性)

・進行(緩徐:急速)

・腸雑音(亢進:消失)

・腹膜刺激症状(ー:+)

・立位単純X線(拡張した腸管ガス像:腸管ガス消失)

 

単純性イレウスの原因は

術後の癒着イレウス、大腸がんによる高度狭窄ですが、

複雑性イレウスの原因はその他にも

腸軸捻転症(S状結腸好発)、嵌頓ヘルニアなどがあります。

 

単純X線像で腸管ガスが消失するのは、

口や肛門からガスが抜けていく事によるもので、

特に「無ガスイレウス」と呼ばれ、

複雑性イレウスが疑われるので注意しましょう

 

複雑性イレウスでは血行障害を伴うため、

腸管が壊死していて見た目結構グロッキーです。(青黒い感じ)

国試では腸管壊死の写真から複雑性イレウスを答えさせられます。

 

 

治療

原則として、

単純性イレウスは「保存的治療」

複雑性イレウスは「緊急手術」です。

(保存的治療:輸液、胃管、イレウス管挿入、抗菌薬投与など)

 

また、複雑性イレウスではショックに移行することがあるため

ショック状態になっていなくても、

現場ではショックになることも想定して治療介入していきます。

 

 

②機能的イレウス

多くは麻痺性イレウスです。

(外傷や中毒による痙攣性イレウスも機能的イレウスに含まれます)

 

麻痺性イレウスの原因は

・腹部手術の術後腸管麻痺

・急性腹膜炎

・急性腸間膜動脈閉塞症

など、神経損傷や血行障害によるものです。

 

物理的な閉塞はなく、腸蠕動が麻痺しているので

・腸雑音:低下~消失

・niveauは少ない

です。

 

治療は単純性イレウスと同様に「保存的治療」ですが

神経損傷や血行障害に対する治療が最優先です。

 

さらに腸運動を促進するために

・コリン作動薬(ネオスチグミン)

・パンテトン酸

・漢方(大建中湯)

などを投与します。

 

 

 

 

 

特に複雑性イレウスは緊急性が高い上に、頻度も高いので、

国試に頻出です。

 

ちなみに、腹膜刺激症状の中でも、

「筋性防御」というのはあまり特異度は高くなくて、

お腹痛い人はたいてい腹筋は緊張しています。

「板状硬」という所見は陽性尤度比が高く(感度・特異度が高い)

腹膜刺激症状の所見をとるときのポイントです。